
管理栄養士の資格を持ちながらも、職場環境に悩む方は多くいます。専門性を活かしつつ、柔軟な働き方ができるのが、フリーランスの管理栄養士です。この記事では、フリーランスの管理栄養士の仕事内容や収入、メリット・デメリット、成功するためのコツを紹介します。
記事を読めば、資格を活かした新たな働き方の選択肢が見えてきます。
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フリーランスの管理栄養士の仕事内容

フリーランスの管理栄養士は、企業や病院に所属せず独立して働く管理栄養士です。専門知識を活かしながら、自分のペースで働けます。フリーランスの管理栄養士の仕事内容は、下記のとおりです。
- レシピ開発
- 料理写真撮影
- 記事執筆
- 特定保健指導・栄養指導
- 料理教室の講師
- セミナーでの講演
- 出張料理サービス
自分の得意分野や興味に合わせて仕事を選びましょう。
レシピ開発
レシピ開発は、フリーランス管理栄養士を代表する仕事の一つです。栄養バランスやカロリー、季節感や調理のしやすさ、見た目の美しさなどを意識して、ターゲットに合ったレシピを考案します。レシピ開発におけるフリーランスの管理栄養士の活躍の場面は下記のとおりです。
- 企業の商品開発
- 飲食店のメニュー提案
- メディア掲載用のレシピ制作
- 病院・介護施設向けの献立作成
料理写真撮影

料理写真の撮影も、フリーランスの管理栄養士の仕事です。魅力的な料理写真は、レシピや栄養指導の効果を高めます。料理写真を撮影する際に重要な能力は、下記のとおりです。
- フードスタイリングの基本技術
- 専用機材の使用技術
- 自然光の活用術
- 撮影のタイミング
- アングルの工夫
窓際の自然光を利用すると料理が美しく映えます。季節感や料理のコンセプトに合った小物・背景を選ぶことも重要です。レフ板やディフューザーといった補助機材を使えば、さらに質の高い写真が撮影できます。クライアントの要望に合わせて撮影スタイルを調整してください。
温かい料理や冷たい料理など、料理の特性に合わせた撮影テクニックを使い分けられると、仕事の幅が広がります。
記事執筆
健康情報や栄養情報などの記事執筆も、フリーランスの管理栄養士の仕事です。健康情報や栄養情報に関する専門的な記事を書くことで、多くの人に知識を届けられます。記事執筆の仕事内容は、主に下記の媒体から依頼されます。
- 食品メーカーの広報誌・Webサイト
- 健康関連メディア
- 女性誌・生活情報誌
- 健康系Webメディア
報酬は記事の長さや専門性によって大きく変わります。短い記事や簡単な内容であれば低めの報酬になる一方、専門性の高い内容や長文の場合は高額になります。記事執筆の仕事を獲得するために、最初はクラウドソーシングサイトで小さな案件を受注することからスタートしましょう。
実績を積み重ねながら、食や健康に関する出版社や編集プロダクションとのつながりを作っていくことをおすすめします。
特定保健指導・栄養指導

特定保健指導や栄養指導も、フリーランスの管理栄養士の仕事です。メタボリックシンドロームに該当する方への個別指導や、生活習慣病予防のための栄養指導などが挙げられます。特定保健指導や栄養指導の魅力は、対面だけでなくオンラインでも指導できることです。地理的な制約が少なく幅広い案件に対応できます。
料理教室の講師
料理教室の講師も、フリーランスとして管理栄養士の知識と調理技術を活かせる仕事です。料理教室の講師の主な仕事内容は、レシピの開発や実習指導です。他にも教室の企画運営や、レシピ教材の作成などもあります。
管理栄養士の資格があるため、単なる料理の技術指導だけでなく、食育や健康管理を組み合わせた独自の教室を展開できます。料理教室を開催するには材料費や会場費などの経費計算も必要なことも覚えておきましょう。
セミナーでの講演

セミナーや講演会での講演も、管理栄養士の専門知識を多くの人に伝える重要な仕事です。専門的な内容をわかりやすく伝えることが求められます。コミュニケーション能力が重要です。フリーランスの管理栄養士が活躍できる場面は、下記のとおりです。
- 医療機関での栄養講話
- 学校・保育園での食育講座
- 健康食品メーカーの製品説明会
- 企業の健康経営研修
- オンラインセミナー
- スポーツ栄養講演
料理教室と組み合わせたワークショップ形式の講演も人気です。参加者が実践を通して学ぶ場を提供できます。小規模な勉強会や地域のイベントから始めて実績を積み重ねましょう。
出張料理サービス
出張料理サービスも、フリーランスの管理栄養士ができる仕事です。顧客の自宅やイベント会場に直接訪問し、その場で調理することで特別な食体験を提供できます。
管理栄養士の出張料理サービスの魅力は、栄養バランスに配慮した健康的な料理を提供できることです。出張料理サービスで管理栄養士は、メニューの提案から調理までを行う場合があります。特別なイベントでの料理提供にも利用されています。
一般的なケータリングと差別化するには、顧客ごとの健康状態や食事制限に応じたメニューの提案が重要です。高齢者や育児家庭に向けた食事のサポートやアレルギー・疾患対応メニューを依頼されることもあります。
フリーランスの管理栄養士の収入

フリーランスの管理栄養士の平均年収は、約300~500万円です(※1)。管理栄養士の実績や知名度により変動します。報酬の相場や他の職種との比較について紹介します。
» 管理栄養士の平均年収を雇用形態・都道府県別に紹介!
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
報酬の相場
フリーランスの管理栄養士の報酬体系は大きく分けて「プロジェクト単位」「時間単位」「成果物単位」の3種類です。報酬額は案件の種類や経験年数、専門分野の知識や実績、クライアントの規模などによって大きく異なります。一般的な報酬の相場は、下記のとおりです。
仕事内容 | 報酬の相場 |
レシピ開発 | 3,000~10,000円(※2) |
記事執筆 | 文字単価0.5~3円 1記事5,000~30,000円(※3) |
料理撮影 | 1品当たり5,000~15,000円(※4) |
栄養指導 | 1回60分で5,000~15,000円(※5) |
専門性の高いセミナー講演 | 1回当たり30,000~100,000円 |
料理教室の開催 | 20,000~50,000円 |
フリーランスとして働き始めたばかりの管理栄養士は、月収5~15万円程度からスタートすることが多い傾向にあります。経験を積むにつれて高い収入を得られます。安定した収入を確保するためには、複数の仕事を組み合わせましょう。
※2 「クラウドワークス」「Lancers」で公開されているレシピ開発の報酬額を参考にしています。
※3 「クラウドワークス」「Lancers」で公開されている記事執筆の報酬額を参考にしています。
※4 「クラウドワークス」「Lancers」で公開されている料理撮影の報酬額を参考にしています。
※5 「Indeed」で公開されている栄養指導の報酬額を参考にしています。
他の職種との比較
フリーランスの管理栄養士の収入と他の職種の平均年収は、下記のとおりです。
職種 | 平均年収 |
管理栄養士 | 300~500万円(※1) |
料理研究家 | 300〜600万円 |
食品メーカー開発職 | 450〜600万円 |
フリーランスライター | 200〜500万円 |
フードスタイリスト | 400〜700万円 |
フリーランスは案件数や種類によって大きく変動します。フリーランスの収入には上限がありません。実力次第では平均収入を超えることも可能です。安定した案件の獲得と専門性の高さが求められます。管理栄養士としての知識を武器に、差別化を図ることが高収入への鍵です。専門性を高めていきましょう。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
フリーランスの管理栄養士のメリット

フリーランスの管理栄養士として働くメリットは、下記のとおりです。
- 時間の自由度が高い
- 多様なプロジェクトに挑戦できる
時間の自由度が高い
フリーランスの管理栄養士の最大の魅力は、時間の自由度が高いことです。勤務時間を自分で設定できるので、育児や介護などプライベートとの両立が格段にしやすくなります。体調や生活リズムに合わせ、集中できる時間帯に作業可能です。
急な予定変更にも対応しやすいのもフリーランスの強みです。会社員のように上司の許可を得る必要がないため、体調不良や家庭の事情で予定を変更したいときも自分の判断で調整できます。複数の案件を並行して取り組むことも可能です。効率的に収入を増やしましょう。
多様なプロジェクトに挑戦できる
多様なプロジェクトに挑戦できるのも、フリーランスの管理栄養士のメリットです。食品メーカーや飲食店、出版社や健康関連企業など、多様なクライアントとの仕事を通じて経験を積めます。フリーランスの管理栄養士は、下記のプロジェクトに参加するチャンスがあります。
- 食品メーカーでの新商品開発サポート
- 飲食チェーンでのヘルシーメニュー提案
- 健康雑誌やWebメディアでの栄養コラム監修
- 企業の健康経営関連プログラム作成
自分の興味や強みに合わせて仕事を選べるため、キャリアの方向性を探りながら働けます。栄養の知識だけでなく、マーケティングや企画、コミュニケーション能力なども自然と身に付きます。多様な経験は、将来のキャリアパスを広げる貴重な財産です。
フリーランスの管理栄養士のデメリット

フリーランスの管理栄養士のデメリットは、下記のとおりです。
- 収入が不安定になる
- 自己管理が求められる
収入が不安定になる
フリーランスの管理栄養士として働く場合、収入が不安定になることが多くあります。雇用されている状態と異なり、毎月一定の給与が保証されません。契約内容や案件数によって月々の収入が大きく変動します。フリーランスの管理栄養士の収入が不安定になる要因は、下記のとおりです。
- 病気やけがで働けない期間がある
- 営業活動や人脈づくりが必要である
- 季節や時期による需要の変動がある
- 新規クライアントの開拓期間が必要である
会社員とは異なり、税金や社会保険料の管理・支払いも自己負担です。確定申告の手続きや将来の年金についても自分自身で計画を立てる必要があります。
自己管理が求められる
フリーランスとして働く管理栄養士は、自分自身のすべてを自己管理する必要があります。会社員と違い、誰かが指示してくれたり管理してくれたりする環境ではありません。高い自己管理能力が求められます。仕事の獲得や営業活動、時間・納期の調整や確定申告などの税務処理において自己管理が必要です。
健康管理も欠かせません。会社員であれば病気の際に休暇が取れますが、フリーランスの場合は体調不良でも締め切りは変わりません。自分の体調管理ができないと、仕事に支障をきたすだけでなく、収入にも直結します。仕事とプライベートの境界線を自分で設定しましょう。
フリーランスの管理栄養士になる方法

フリーランスの管理栄養士に必要な資格や求められるスキルについて紹介します。
必要な資格
フリーランスの管理栄養士として活動するには、管理栄養士の資格が必要です。管理栄養士の資格がなければ、栄養指導や食事療法などの専門的な業務ができません。仕事の幅を広げるためには、下記の資格があるとより有利です。
- 栄養士
- 食品衛生責任者
- 調理師免許
- フードコーディネーター
- 健康運動指導士
- 食生活アドバイザー
- 野菜ソムリエ
- 日本糖尿病療養指導士
資格はすべて必要なわけではありません。自分が目指す方向性や得意分野に合わせて、選択的に取得しましょう。資格をとるだけでなく、実務経験を積むことも大切です。
求められるスキル
フリーランスの管理栄養士として活躍するには、専門知識だけでなく多様なスキルが必要です。求められるスキルは、下記のとおりです。
- レシピ開発・調理技術
- 文章作成能力
- コミュニケーション能力
- プレゼンテーション能力
- 写真撮影技術
- SNS・ブログ運用スキル
- 時間管理能力
- 営業・提案力
- パソコンスキル
スキルは一朝一夕で身に付くものではありませんが、日々の業務や自己研さんを通じて少しずつ向上させましょう。
フリーランスの管理栄養士として成功するコツ

フリーランスの管理栄養士として成功するコツを紹介します。
- 求人に積極的に応募する
- 専門性・スキルを磨く
- SNSやブログで情報発信する
求人に積極的に応募する
フリーランスの管理栄養士として成功するために、積極的に求人に応募しましょう。多くの案件に触れることで、経験を積み、人脈を広げられます。複数の求人サイトやクラウドソーシングサイトに登録し、毎日チェックしてください。管理栄養士専門サイトだけでなく、一般的な求人プラットフォームも活用しましょう。
挑戦できそうな案件には積極的に応募する姿勢が大切です。応募書類は案件ごとに作成し、自己PRを工夫しましょう。過去の実績をポートフォリオとしてまとめておくことも効果的です。初めは小さな案件からスタートし実績を積み上げましょう。断られても諦めず、継続的に応募してください。
専門性・スキルを磨く

基本的な知識だけでなく、専門分野のスキルを磨くことがフリーランスの管理栄養士としての価値を高めます。特定の分野に特化した専門知識を深めることで、他の栄養士との差別化が可能です。専門性を高めるために、下記の分野に注力すると効果的です。
- スポーツ栄養学
- 食育指導
- 減量指導
- 特定疾患向け栄養管理
最新の栄養学研究や食品トレンドに関する情報収集も欠かせません。定期的に専門誌を読んだり、オンラインセミナーに参加したりして知識をアップデートしてください。技術面では、料理の腕を磨くことも重要です。調理師資格の取得や専門コースの受講を検討すると、レシピ開発の仕事を獲得しやすくなります。
SNSやブログで情報発信する
SNSやブログで情報発信することも、成功の重要なポイントです。認知度を高め、仕事の幅を広げましょう。定期的に質の高い栄養情報を発信すれば、専門性をアピールできます。以下のプラットフォームを活用した情報発信が効果的です。
- YouTube
- X(旧Twitter)
- 専門ブログ
情報発信を続けることで、企業や雑誌などのメディアからの仕事依頼につながる可能性も高まります。読者やフォロワーからの質問に丁寧に対応することで、信頼関係の構築が可能です。
まとめ

フリーランスの管理栄養士は、以下のような多岐にわたる仕事ができます。
- レシピ開発
- 料理撮影
- 記事執筆
- 栄養指導
時間の自由度が高く、自分の裁量で仕事を選べることがメリットです。一方で、収入の不安定さや自己管理の必要性がある点も覚えておきましょう。
フリーランスの管理栄養士として成功するために、自分の強みを活かし、必要なスキルを磨くことが大切です。記事を参考にして、充実したフリーランス生活を送りましょう。