
管理栄養士として働いているものの、給料面に不満を感じている方は多くいます。転職を考えている場合は、管理栄養士の給料水準を把握したほうが有利です。この記事では、管理栄養士の給料が低い理由や状況別の年収、給料アップの方法を解説します。
記事を読めば、自分の給与が平均に対して少ないのか、どのように給料を上げるのかがわかります。管理栄養士の給料が低い理由は、業務独占資格ではない点や利益を生み出しにくい職種である点などです。給料を上げるためには、専門資格の取得や高待遇の職場への転職を検討しましょう。
» 管理栄養士の仕事内容と向いている人の特徴
管理栄養士の給料が低い理由

管理栄養士の給料が低い理由は、以下のとおりです。
- 業務独占資格ではないから
- 利益を生み出しにくいから
- 管理栄養士の人数が多いから
- 女性が多くキャリアの継続が難しいから
業務独占資格ではないから
管理栄養士の給料が低い理由の一つは、業務独占資格ではない点です。管理栄養士の資格を持っていなくても一部の業務を行えるため、資格の価値が低下しています。業務範囲も不明確であり、管理栄養士でなくても対応できる業務が多い現状があります。
しかし、管理栄養士の専門知識やスキルは、さまざまな場面で必要です。雇用側の理解が不足している職場では、価値を適切に評価する仕組みづくりが求められます。
» 管理栄養士と栄養士の仕事内容や給与面の違いを解説
利益を生み出しにくいから
管理栄養士の業務は、直接的な利益を生み出しにくい性質があります。栄養管理や食事提供が主な業務であり、付加価値を付けるのが難しいためです。売上や利益への貢献度が見えにくく、コスト削減の対象部門とみなされることが多い点も要因です。
長期的に見れば、適切な栄養管理は患者の健康回復や疾病予防に大きく貢献します。病院や施設では、管理栄養士の業務は必要経費と捉えられがちです。栄養指導の効果は短期的に現れにくく、他の医療職に比べて収益性や重要性が十分に認識されていません。
» 専門性を生かす!管理栄養士にしかできないことと分野別の業務内容
管理栄養士の人数が多いから

管理栄養士の資格取得者数が年々増加しています。求人市場の競争率の高さが、給料の低下につながっています。高い給料で募集をかけなくても、一定の求人応募を集められるからです。多くの管理栄養士が同じ職場や業界に集中している点も、理由の一つです。人材の流動性が低く、給料上昇の機会が少なくなっています。
女性が多くキャリアの継続が難しいから
管理栄養士の職場では女性の割合が高く、キャリアの継続が困難です。結婚や出産による退職が多いため、長期的なキャリア形成ができず、給料が上がりにくくなっています。子育てが落ち着いた後も、フルタイムでの復帰が困難です。時短勤務や非正規雇用が増える点も、平均給料が低い理由の一つです。
管理職や指導的立場に就く女性が少なく、給料上昇の機会が限られる点も要因になります。
【年齢別】管理栄養士の平均給料

以下の年代別に、管理栄養士の平均給料を紹介します。
- 20代
- 30代
- 40代
- 50代
- 60代以上
20代
職場や勤務地によって差はありますが、20代の管理栄養士の平均年収は約300万円です(※1)。経験が浅く、基本的なスキルを習得する時期であるため、他の年代と比べて低めになっています。
» 求人ボックス 給料ナビ(外部サイト)より一部引用
20代はキャリアアップを図る重要な時期です。資格取得や専門性の向上に力を入れると、将来的な給料アップにつながる可能性があります。後のキャリアプランのために、計画を立てましょう。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
30代

30代の管理栄養士の平均年収は約400万円です(※1)。20代と比べると経験とスキルがついているため、給料が高くなります。能力や勤務先の規模によって、約300〜500万円の幅があります。30代はキャリアアップや転職のタイミングとしても最適です。管理職になると平均年収が500万円を超える場合もあります。
» Indeed(外部サイト)より一部引用
同時に、結婚や出産などで退職する割合が多いのも30代です。転職や退職を検討している際は、現状のキャリアを考慮して決めましょう。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
40代
40代の管理栄養士はキャリアのピークを迎える時期です。平均年収は約430万円となっています(※1)。40代の場合は経験と専門知識を活かし、高度な業務や責任ある立場に就くことが可能です。管理職や指導職、後進の育成など、担う業務が多くなります。
» 求人ボックス 給料ナビ(外部サイト)より一部引用
培ってきた経験は、健康管理や生活習慣病の予防など、専門的な分野でも活用可能です。給料面では、30代と比べて大きな上昇は見られない傾向にあります。転職市場での需要が高いため、キャリアアップや転職のタイミングにはおすすめです。
専門性を活かした副業や独立開業を考える人もいる一方で、キャリアチェンジや異業種への転職を考える人もいます。転職を考えている場合は、現状や持っているスキルを考慮し、自身のキャリアの方向性を見直す必要があります。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
50代

50代の管理栄養士の平均給料は、約450万円です(※1)。経験と実績により、給料が上昇する傾向にあり、管理職や専門性の高いポジションに就ける可能性が高くなります。転職によるキャリアアップの機会は減少傾向であり、注意が必要です。50代になると、仕事と私生活のバランスを考える人もいます。
» Indeed(外部サイト)より一部引用
若手の指導や後進の育成、コンサルティング業務への転向など、長年の経験を活かして独立開業する人も多い傾向です。自分の経験とスキルを活用できるキャリアを歩むか、ワークライフバランスを重要視するかで、今後の年収が変わってきます。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
60代以上
60代以上の管理栄養士の平均年収は、約400万円前後です(※1)。管理職の場合は500万円以上になる可能性があります。以下の働き方が多くなるため、40代や50代と比べると給料が低くなる傾向です。
- 定年後の再雇用
- 非常勤
- 短時間勤務
- パートタイム
» 求人ボックス 給料ナビ(外部サイト)より一部引用
コンサルティング業務などで高収入を得られる場合もあります。高収入を得たい場合は、経験やスキルを活かしましょう。健康管理や食育指導など、長年の経験を活かした分野での活躍ができます。給料は勤務形態や役職、勤務先によって大きく異なるため、個々の状況に応じた働き方を見つけるのが大切です。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
【職場別】管理栄養士の平均給料

管理栄養士の給料は勤務先によって大きく異なります。以下の職業別の平均給料を紹介します。
- 病院・福祉施設
- 学校・保育園
- 企業
- 行政機関
病院・福祉施設
病院や福祉施設で働く管理栄養士の平均給料は、約300〜400万円です。病院の場合は、約450万円前後と高水準になる可能性もあります。給料に影響を与える要因は、以下のとおりです。
- 夜勤の有無
- 休日出勤の有無
- 経験年数
- 役職
- 勤務先の規模や地域
大規模病院や大手福祉法人、都市部の施設では給料水準が比較的高くなる傾向があります。正社員よりも非常勤やパートの求人が多い傾向です。業務内容は、栄養管理だけでなく事務作業も多くあります。チームの一員として、他職種との連携や患者・利用者とのコミュニケーションも求められます。
» マイナビコメディカル(外部サイト)より一部引用
学校・保育園
学校や保育園での管理栄養士の平均給料は、約250〜350万円です。勤務時間が規則的で残業が少なく、夏休みや冬休みなどの時期には長期休暇を得られるなど、安定性と働きやすさが特徴です。公立学校の栄養教諭は、公務員待遇で収入も安定していますが、私立学校や保育園の給料水準は比較的低くなります。
業務に関しては、栄養指導や食育活動、献立作成が中心で調理業務は少ないため、時間に追われる子育て世代の女性に人気です。経験年数に応じて給料が上昇する傾向があるため、長く勤めると収入アップが期待できます。学校給食センターも安定した収入が見込める職場の一つです。
» マイナビコメディカル(外部サイト)より一部引用
企業

企業の管理栄養士の平均年収は、約250〜330万円ですが、企業によって異なります。給料面では、平均よりも高い場合もあり、転職を考えている人には魅力的な選択肢です。以下の職場では、管理栄養士の専門知識や技能が高く評価されています。
- 食品メーカー
- 健康食品会社
- スポーツクラブ
- 製薬会社
- 給食会社
企業が提供する商品やサービスの付加価値向上に直接貢献可能です。活躍次第では、給料も上がる可能性があります。企業での仕事は競争が激しいので、常に自己研鑽が求められます。企業の管理栄養士を目指す場合は、新しい知識や技術の習得、マーケティングスキルの向上など、幅広い能力を磨きましょう。
» マイナビコメディカル(外部サイト)より一部引用
行政機関
行政機関で働く管理栄養士の平均給料は、約450〜600万で、民間企業と比べて高い傾向です。公務員なので、安定した収入が見込めます。初任給は約20万円から始まり、経験を積むにつれて上がります。地域や経験年数によって給料の幅があるので注意しましょう。行政機関で働くメリットは以下のとおりです。
- 福利厚生が充実している
- 定期的に昇給や賞与を受けられる
- 長期的な収入の安定性が見込める
- 管理職への昇進機会が多い
- 社会貢献度の高い仕事をこなせる
退職金制度も整っているので、将来の経済的安定も期待できます。残業が少なく、ワークライフバランスを保ちやすい環境も魅力です。栄養調査や健康危機管理、飲食店からの営業許可検査などの業務にたずさわるため、常にスキルアップを目指す必要があります。
» マイナビコメディカル(外部サイト)より一部引用
管理栄養士と他の医療系職種の給料比較

管理栄養士と他の医療系職種の給料を比較した結果を、以下に紹介します。
- 看護師との比較
- 薬剤師との比較
看護師との比較
看護師の平均給料は約500万と高い傾向です(※1)。管理栄養士とは約100万円の差があります。業務内容や資格の性質の違いが理由です。看護師は医療現場での需要が高いことに加え、人手不足が深刻であるため、給料が高くなります。夜勤や残業が多く、給料に反映されやすい傾向です。
管理栄養士の場合は夜勤がほとんどなく、残業も少ないのが一般的です。病院での配置人数も看護師に比べて少ないため、給料に大きな差が出やすくなっています。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
薬剤師との比較
薬剤師の平均給料は550万円以上となっており、管理栄養士と比べると、約1.5〜2倍程度の給料です(※1)。薬剤師は業務独占資格であり、需要の高さや責任の重さが高水準の報酬につながっています。職場によっては夜間や休日勤務があり、手当が加算される点も要因の一つです。
薬剤師には調剤薬局での開業の選択肢もあり、高収入を得られる可能性が広がります。
※1 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」では、管理栄養士・栄養士の区別がされていません。栄養士の区分の平均年収を参考にしています。
管理栄養士が給料を上げる方法

管理栄養士の給料を上げる方法を、以下に紹介します。
- 専門資格を取得する
- 高待遇の職場に転職する
- 副業で収入を増やす
- 1つの職場で長く勤める
専門資格を取得する
専門性を高めると、より高度な業務を担当可能です。需要が高い資格としては、食品衛生管理者やスポーツ栄養士、介護支援専門員などが挙げられます。糖尿病療養指導士やNST専門療法士などの専門的な資格もあるため、検討してください。
以下の資格も、専門的なスキルや知識が身に付くためおすすめです。
- 健康運動指導士
- 栄養ケアマネジメント専門管理栄養士
- 臨床栄養師
- 産業栄養指導者
- 食育指導士
資格を取得すれば、高度な栄養指導や栄養管理が可能になりますが、取得までに時間とコストがかかる点に注意が必要です。自分のキャリアプランに合わせ、計画的に取り組みましょう。資格取得後は、専門性を活かせる職場への転職も視野に入れるのがおすすめです。
高待遇の職場に転職する
求人で高待遇の職場を探して転職する方法が、簡単であり効果的です。転職を考える際は給料水準が高く、福利厚生も充実している大手企業や有名企業の求人の確認から始めましょう。給料や待遇が、自分の希望する条件にマッチしているかを確認してください。求人を見る際は、キャリアアップの可能性も考慮しましょう。
将来的な昇給や昇進のチャンスがある環境を選ぶと、長期的な収入増加が期待できます。専門的なスキルや経験、資格を活かせる職場を選ぶと、見合った報酬が得られる可能性が高くなります。転職エージェントの利用も効果的です。
エージェントは、高待遇の求人情報を多く持っているので、自分で探すよりも良い条件の職場を見つけやすくなります。状況に応じた給料交渉のスキルも重要です。企業によっては条件を応募者に聞く場合があります。希望の待遇を引き出すために、自分の価値を適切にアピールする能力が必要です。
副業で収入を増やす

副業は、管理栄養士の収入を増やす有効な方法です。資格や専門知識を活かして、さまざまな副業に取り組めます。副業におすすめの仕事は、以下のとおりです。
- フリーランスの栄養コンサルタント
- 個人向け栄養指導・食事プラン作成
- 健康食品のアフィリエイト
- 栄養・健康関連の記事執筆
- オンライン栄養セミナー開催
本業の経験を活かしつつ、新たなスキルも身に付けられる魅力があります。収入を増やすだけでなく、キャリアの拡大も可能です。副業を始める前に、現在の職場の規定に注意が必要です。職場によっては、副業を禁止している場合もあるので、事前に確認してください。
1つの職場で長く勤める
管理栄養士の給料を上げるには、同じ職場で働き続けるのも効果的です。多くの職場では、勤務年数が増えるにつれて給料が上がる仕組みがあります。重要な役割を任される可能性も高くなるため、昇給のチャンスにつながります。職場特有のスキルや知識を深められる点もメリットです。
後輩の指導や管理職への道が開かれるだけでなく、将来的な独立やキャリアチェンジにも活かせます。長期勤続が必ずしも最適な選択とは限らないので、キャリアのゴールや職場環境を考慮し、最適な選択をしましょう。
まとめ

管理栄養士の給料が低い理由には業務独占資格ではなく、利益に直結する業務が少ない点などが挙げられます。管理栄養士は、健康を支える重要な仕事です。給料面に不安を感じ、転職を検討している場合は、条件の良い求人を探しましょう。
平均給料よりも高い給料が設定されている職場もあります。ただし、給料が高い職場では、高度なスキルや専門性が求められる可能性が高いです。現在の自分の能力や経験年数を考慮し、よく検討してから転職活動を進めましょう。